安亀忠の血統的な優位性
BLOG

研究所ブログ

安亀忠の血統的な優位性

2018.03.30和牛の血統について

安亀忠の血統を読み解くには、まず安亀忠の父方の祖父である忠茂勝から読み解かないといけません。(写真は安亀忠号)

忠茂勝 平成12年生まれ

(平茂勝×忠福×第20平茂×金水9)

忠茂勝は、同年代に活躍した勝忠平と同じ交配で造成されています。
同じ交配ですが、勝忠平は平茂勝の体型や発育といった遺伝を強く受け継いでおり、忠茂勝は忠福の優れた資質や肉質の遺伝を強く受け継ぎました。

忠茂勝は気高系ながら産子には、但馬牛のような資質を持ち、枝肉はロース芯の大きさやモモ抜けの良さが表現されました。

また忠茂勝は、第20平茂の直子である平茂勝を孫に交配する「直子孫掛け」という近親交配で造成されており、第20平茂の増体や体型の遺伝子がよりホモ化されており、忠茂勝の産子はバラツキが少なく発育の良い、幅のある産子が生まれました。

こうした、たぐいまれなる肉質の良さと増体力を忠茂勝は両立しており、将来を期待されていましたが、残念なことに後代検定の成績が判明してまもなく急死しました。

そして、残された貴重なストローを、菊照土井の息子牛である谷照の母体に交配することで善亀忠が誕生しました。

善亀忠 平成19年生まれ

(忠茂勝×谷照×平茂勝×神高福)

善亀忠は、忠茂勝の持っている安美土井(忠福の父)系の特徴である強烈な脂肪交雑力とモモ抜けの良さに加えて、二代祖の菊美土井(谷照の祖父)系の特徴である肉のキメやシマリの良さを受け継ぎました。

また善亀忠は、平茂勝の直子である忠茂勝を孫に交配する「直子孫掛け」で造成され、平茂勝の遺伝子がよりホモ化され、増体力や体型も強化されています。

善亀忠はこの稀にみる産肉能力で昨年の宮城全共で素晴らしい成績を収め、鹿児島県の気高系の改良が非常に高い水準まで達していることを全国に示しました。

安亀忠 平成25年生まれ

(善亀忠×安糸福×金幸×平茂勝)

安亀忠の産肉能力は稀にみる素晴らしい成績ですが、体型も88.2点という高得点でほぼ完ぺきな理想和牛体型です。

善亀忠の84.7点から安亀忠の88.2点まで一気に向上させたのは、安亀忠の2代祖である安糸福と3代祖の金幸が貢献していると思います。

安糸福 平成7年生まれ

(安福165-9×糸福(大分)×八重福×福鶴57)

安糸福は、バラツキのない安定した脂肪交雑、ロース芯の大きさ、サシの細かさを産子に強く伝える遺伝力があります。安糸福を母体にした繁殖母体としての成績も非常に優れています。

安糸福の1代祖の安福165-9はロース芯が大きく中駆の伸びがあり、2代祖の糸福(大分)は体積、均称、腰と体型のバランスが良く、乳器の良さを産子に伝えたことから多くの雌が繁殖母体として保留されました。

安亀忠は、安糸福から脂肪交雑の遺伝力とロース芯の大きさ、サシの細かさを受け継ぎました。
また少量ですが糸福(大分)から第7糸桜と鳥取県由来の栄光系の血が入りました。
糸福を通じて鹿児島県の気高系や栄光系とは異なる体積や深みを伝える遺伝子が入ったことが、安亀忠の体型をより良くしたと考えます。

金幸 平成5年生まれ

(金徳×神高福×宝勝×金水9)

金幸は栄光系の始祖牛である栄光から→第5栄光→金水9→金徳(2代祖が第20平茂)→金幸と、現在まで継続して繋がっている唯一の栄光系の種雄牛です。

第5栄光の息子である金水9はその他の栄光系や気高系の種雄牛と比べると小さかったですが、そのぶん資質や品位が良く、肉質が優れていました。

金幸の血統が安亀忠に与えた影響を考えてみると、一代祖の金徳の2代祖に第20平茂が入っており、忠茂勝と善亀忠が二世代に渡り直子孫掛けをして固めた第20平茂の血を、再び重ねて交配しています。
また金幸の2代祖である神高福は、善亀忠の4代祖でもあります。神高福は忠福の息子ですので、忠茂勝(2代祖が忠福)とも血縁関係になります。

安亀忠は、金幸が3代祖に入ることによって、第20平茂の遺伝子をより強くホモ化させることが出来ました。
同時に金水9や神高福の栄光系や忠福の遺伝子をあらためてホモ化させることによって、安亀忠は善亀忠を超える体型の良さを得たと考えます。

安亀忠 平成25年生まれ

(善亀忠×安糸福×金幸×平茂勝)

安亀忠はスーパーモダン気高系とも呼ぶべきでしょうか、今までの気高系の常識を覆すような素晴らしい産肉能力を持っています。

善亀忠が持っていた気高系を超えたコザシ、肉のテカリ、脂肪質の遺伝子を素直に受け継ぎ、そこに強烈な脂肪交雑と安福165-9のような大きなロース芯の遺伝子が加わりました。

また善亀忠は枝重の育種値がBであるように増体が少し物足りないところがありましたが、安亀忠は体型が向上したので、産子もバラツキなく、発育もよく、枝重が期待できます。

安亀忠は現時点で流行している血統である、百合茂、勝忠平、安福久、第一花国が父系にも母系にも入っていないために、交配相手の選択肢が非常に広く、雑種強勢が生まれやすいという血統的な優位点があります。
もし注意するとすれば、安亀忠は第20平茂の血量が濃いので、「百合茂×平茂勝×金幸」といった気高系の系統交配で造成された繁殖母体に交配すると近攻係数が高くなってしまうので避けて下さい。
そういった気高系の系統交配牛以外には、どんな母体とも安亀忠は相性が良いでしょう。

安亀忠は経済性の高い遺伝子を保有しており、全国的に流行している血統で造成されてはいないので、母体を選ばずに、交配の幅が非常に広いという血統的な優位性があります。

安亀忠の登場は、和牛という育種はまだまだ発展の余地があることを示しました。

安亀忠は気高系の特徴である増体力や温厚さ、但馬系の特徴であるロース芯の大きさや肉質の良さの、両方を兼ね備えた奇跡のような種雄牛です。

明治・大正から現代に渡るまでの長い年月、多くの方々が情熱を持って改良を続けてこられた努力により、安亀忠が誕生しました。

安亀忠の造成に関わられたすべての方に敬意を示したいと思います。

安亀忠 産肉成績  

去勢 安亀忠×第2勝王×菊照美
558.0kg  BMS 6  ロース芯66cm

去勢 安亀忠×第2安平×勝安竜
537.9kg  BMS 11  ロース芯70cm

去勢 安亀忠×第2勝王×神徳福
478.1kg  BMS 11  ロース芯66cm

去勢 安亀忠×百合茂×安糸福
486.9kg  BMS 10  ロース芯65cm

去勢 安亀忠×金幸×神高福
461.1kg  BMS 11  ロース芯67cm

去勢 安亀忠×安福久×金幸
543.6kg  BMS 11  ロース芯80cm

去勢 安亀忠×金幸×金幸
514.5kg  BMS 11  ロース芯70cm

去勢 安亀忠×朝青龍×第2平茂勝
446.6kg  BMS 11  ロース芯64cm

去勢 安亀忠×金忠平×第2平茂勝
544.6kg  BMS 12  ロース芯65.8cm

去勢 安亀忠×第2平茂勝×安平
584.5kg  BMS 10  ロース芯83cm

メス 安亀忠×金忠平×神徳福
576.0kg  BMS 9  ロース芯72cm

メス 安亀忠×安考平×第2平茂勝
403.4kg  BMS 10  ロース芯63cm

メス 安亀忠×千代桜×勝安竜
524.6kg  BMS 11  ロース芯86cm

メス 安亀忠×第2安平×金幸
434.0kg  BMS 11  ロース芯73cm