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茂久桜の2代祖「茂重桜」と3代祖の「藤桜」から読み取る、茂久桜の血統的な優位性
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茂久桜の2代祖「茂重桜」と3代祖の「藤桜」から読み取る、茂久桜の血統的な優位性

2015.12.15和牛の血統について

今もっとも人気と実力を兼ね備えた但馬系の種雄牛は茂久桜です。
後代検定の結果は、去勢でBMS9.3 雌でBMS8.9  と好成績でした。その後のフィールドでも2桁を連発し、鹿児島の育種値は4位に位置しています。

茂久桜 (安福久 × 茂重桜 × 藤桜)

平成20年生 育種値 C’HC’HHH

茂久桜の父親は、日本を代表する名牛の安福久です。
茂久桜は、安福久の爆発力ある脂肪交雑能力を素直に受け継いだと考えられます。
そして茂久桜は、但馬系としては発育が良く、脂肪質も風味も良いことからブランド牛の素牛として人気が高いです。

安福久は、同じ「もとじろう」ファミリーの美国桜と同様に、雌牛の方が去勢よりBMSが高いという特徴があります。茂久桜は雌の成績が優れていることはもちろんですが、茂久桜は去勢のBMSも非常に高いという驚くべき特徴があります。

茂久桜が雌でも去勢でも2桁を連発する理由は、1代祖の安福久から能力を受け継いだというだけでは説明できないと思います。
私は茂久桜という種雄牛は、単純に安福久の後継牛ということだけでは終わらない、時代を代表する名牛だと考えています。
それを解き明かすために、茂久桜の2代祖である「茂重桜」と、3代祖の「藤桜」の血統を見ていきたいと思います。

茂重桜 (茂重波 × 第7糸桜 × 晴美 × 第7糸桜 × 深貞政)

平成2年生 育種値 CAACAA

茂重桜は、島根県と宮城県との精液ストローの交換により造成された、全国的にも珍しい熊波系の種雄牛です。
茂重桜は肉質の遺伝力が強いことが特徴で、とくに脂肪の質、色沢、風味が非常に良かったです。
茂久桜が松坂牛の素牛として好まられている脂肪質の良さは、茂重桜の遺伝があると考えられます。
茂重桜は、多産で繁殖能力が高かった茂重波と第7糸桜の能力も受け継いでおり、繁殖母体としても活躍しました。

藤桜 (糸藤 × 第7糸桜 × 第4倉花 × 城松)

昭和60年生 育種値 ABACCA

藤桜は、島根県と岡山県の育種組合による精液ストローの交換により造成された、第7糸桜と岡山系統の血を固めた藤良系の種雄牛です。
藤桜は、枝重とバラ厚と脂肪交雑の能力が高く、非常に経済性の高い種雄牛でした。
藤桜の雌産子は、繁殖母体としても評価が高く、共進会でも上位入賞に輝くものが多かったです。

藤桜の3代祖の第4倉花は、岡山系統の三豊に島根県の地元の雌牛を交配した種雄牛で、発育と体型が優れていました。藤桜の4代祖は資質に優れた兵庫県の奥城系の城松です。

そして藤桜の血統で注目すべきは1代祖の糸藤の血統です。

糸藤 (第7糸桜 × 第6藤盛 × 第56保信 × 第2安山)

昭和50年生 育種値 ABCCCA

糸藤は、第7糸桜を、第7糸桜を通さない岡山県の在来藤良系の母体に交配した、全国的にも希少な岡山系統の血を引く種雄牛です。
糸藤の産子は、肉質が良く、発育良好で体積に富んでいました。糸藤は、現在でも育種値は高い数値を示しているというほどに能力が高く、岡山県の改良に非常に貢献した名牛です。

このように茂久桜の血統を見てみると、現在の主流ではない熊波系や、希少な岡山県の在来系統の血が多く含まれていることが分かります。
全国的に平茂勝系の母体が増えるなかで、茂久桜には、安福久の4代祖と茂重桜の3代祖に晴美が入っているのみです。また茂久桜は第7糸桜の血は入っていますが、現在の主流となっている北国7の8は入っていません。

和牛繁殖は血を遠ざけて交配することによって、雑種強勢が起こり、子牛は大きく強くなり、両親の能力をより強く遺伝させることが出来ます。

全国的に希少な血統で構成されている茂久桜は、交配すると自然に5元配合になりやすく、雑種強勢が得やすいです。雑種強勢は、活力、生命力、遺伝力を底上げする力を持っています。

和牛は近年非常に速いスピードで改良が進み、全国の繁殖母体に名牛の血がふんだんに入り、全国的に良血揃いとなりました。
しかし一方で、同系統の種雄牛ばかり利用され、近郊係数は高くなり遺伝子のプールは狭くなり、繁殖障害や奇形のリスクが増えているように思われます。

茂久桜は、本牛の能力の高さはもちろんですが、交配した繁殖母体の能力を最大限かそれ以上に引き出すことが出来ると考えています。

茂久桜が安福久の後継牛でありながら雌でも去勢でも成績が良い理由は、茂久桜の本牛の能力が高く、そして血縁が遠いために繁殖母体の能力を素直に遺伝させることができ、そして雑種強勢の力で能力を底上げするからだと考えます。

私たちミルクネット受精卵研究所は、茂久桜の血統を次の世代に残して行きたいと願っております。
是非とも茂久桜の血を利用して、近交を防ぎ、多産長命で、高能力が持続する繁殖母体を造成して下さい。